Cork

頬杖日記

子どもと読んだ絵本、遊び、自分の勉強、そのほか面白い・便利と思ったものを書いています。ボストン在住。

MENU

Lifelong Kindergarten読書メモ

 本ページはプロモーションが含まれています

あるサイトで見かけた教育関連おすすめ本一覧。

 

その中に入っていたLifelong Kindergartenを読んでみました。

 

自分用メモとしてまとめておきます。

 

著者ミッチェル・レズニック

著者は、LEGO Mindstormsの基礎となるツールやスクラッチの開発に携わり、コンピュータ クラブハウスという無料の創造活動センターの共同創業者でもあるミッチェル・レズニックさん。

 

この本では、『創造力を育てるにはどのような学び方をすれば良いか』という課題に対し『創造力育成の鍵となる4つのP』を提唱しまとめています。

 

著者は、『4つのP』を導き出すにあたり、特に幼稚園での子どもたちの学び方からインスピレーションを得ておりLifelong Kindergartenというタイトルにつながっています。

 

以降、本の内容の抜粋と意訳です。

 

幼稚園のはじまり

世界で初めての幼稚園は、フリードリヒ・フローベルが1837年にドイツで開いたとされる。

 

フローベルは、子どもの学習は、玩具や工作道具との触れ合いの中で育まれると考えた。

 

この学習プロセスを促進するための独自の玩具のデザインもしており、現在ではフローベルのギフトと呼ばれ親しまれている。

 

マリア・モンテッソーリによる教育理論 (モンテッソーリ教育) はフローベルの考えも土台にしている。

 

特に身体的で感触的刺激のある素材を通しての子どもの感覚に働きかけることを重んじているという点でフローベルの考えの影響が伺える。

 

The creative learning spiralと4つのP

創造力は、以下の活動サイクルを通して育まれる。

imagine -> create -> play -> share -> reflect -> imagine

(想像 -> 創造 -> 遊ぶ -> 共有 -> 内省 -> 想像)

 

その上で、創造力を育てる学びに重要だと考える4つのP (Project, Passion, Peer, Play) を提唱した。

We believe the best way to cultivate creativity is to support people working on projects based on their passion, in collaboration with peers and in a playful spirit (P16, L11-13)

 

Project

  • 予め決められた手順のハンズオンアクティビティは、それだけでは不十分である。
  • プロジェクトとして、何かを作る / デザインする / 組み立てるといった活動を通じた時に最も学びの効果が得られる。

 

Passion

  • 本当に興味があることに取り組んでいるとき、人は長く、真剣に取り組む。
  • 多様な発想を結びつけたり、新しい思考法を身に付けやすくもなる。

 

Peer

  • 他の人との活動を通じ、補い合ったり、フィードバックをもらって新しいものを作ったり改良していける力も必要。
  • スクラッチコミュニティを作る時に決めたガイドラインは、Be respectful / Be constructive / Be honest / Help keep the site friendly。
  • 教師やモデレーターは重要。自分がcatalyst / consultant / connector / collaboratorとして、状況に応じた役割を発揮できるよう努めよう。

 

Play

  • 最初から完成を目指さなくてもよい。何を作ろうかわからなくても物おじしないで。
  • 遊びながら実験したり、リスクを取ったり、テストしたり、いじくり回す過程で発見やアイデアに行き着くこともある。

 

 

創造的な活動につなげるためには、上記の4つのPが備わっていることが理想的ということでした。

以下、スクラッチを例に4つのPを当てはめています。

 

スクラッチコミュニティではまずプロジェクト (Project) の作成から始まる。

自由度が高く、色々なものを作れるので、ユーザーは自分の興味のあることに熱意 (Passion) を持って長く、真剣に取り組んでいる

遊ぶようにして実験やリスクをとることもでき (play)、コミュニティ内でお友達に見せたり、学んだり、共有することでコラボレーションの輪を広げられる土壌も育てている (peer)

 

創造力の育成に携わる人へ向けた10個のTips x 3

最後の章では、学習者、教育者、おもちゃ / アクティビティの制作者、それぞれの立場の人へ向けたTipsを10個ずつまとめています。

 

学習者への10個のTips

まずは学習者むけの10個のTipsです。

 

1. Start simple

シンプルなことから始めて、結果を確かめながら、拡張や発達させていこう

 

2. Work on things that you like

興味あることだったら、より長く、より真剣にとり組める

 

3. If you have no clue what to do, fiddle around

何を作ろうか思い浮かばない場合は、とりあえず目の前にあるもので色々試してみよう

 

4. Don't be afraid to experiment

手順に従うだけでなく、新しいことを自分で試してみよう

 

5. Find a friend to work with and share ideas

一緒にやる友達を見つけよう

コラボレーション、共有、インスピレーションを得る、グループに参加するなど、どんな方法でも良い

 

6. It's ok to copy stuff (to give you an idea)

着想を得るために、真似やコピーをすることを躊躇わなくても良い

ただし適切な謝意や引用は示さなければいけない

もちろん、他の人が自分の作品やアイデアを土台にすることにもオープンでいよう

 

7. Keep your ideas in a sketchbook

アイデアは、ノートやデータに記録しておこう

そうすることで、他人にシェアしたり、将来自分のやり方を見返すことができる

 

8. Build, take apart and rebuild

最初からパーフェクトにできなくて良い

アジャイル的にやってみよう

 

9. Lots of things can go wrong; stick with it

つまずいても、粘り強く続けてみよう

解決方法を人に聞いてみたり、オンラインで探してみよう

適度な休憩も忘れずに

 

10. Create your own learning tips

自分に合った学習方法を作ろう

物事に取り組みながら、自分のためのラーニングストラテジーを洗練していこう

 

親や教師への10個のTips

次に子どもと関わる親や教師への10個のTipsです。

The creative learning spiral (imagine, create, play, share, reflect) の5つの活動に対し2個ずつあげています。

There's a common misconception that the best way to encourage children's creativity is simply to get out of the way and let them be creative. Although it's certainly true that children are naturally curious and inquisitive, the need support to develop their creative capacities and reach full creative potential. (P167, L21)

Supporting children's development is always a balancing act: (P168, L1)

 

1. Imagine: Show example to spark ideas

多くの場合、まっさらな状態から始めるのは難しい

何ができるか、色々な例を見せてあげることでアイデアが生まれてくる

 

2. Imagine: Encourage messing around

頭の中で考えるだけでなくて、とにかく、めちゃくちゃでも良いので、材料を手に取って手を動かすように促してみよう

 

3. Create: Provide a wide variety of materials

子どもの創造力を引き出すために、さまざまな道具や材料を用意してあげよう

絵を描くための道具、組み立てられる材料などから考えてみて

 

4. Create: embrace all types of making

作りたいものや興味があるものは子どもそれぞれ

子ども達がやる気が出る創作活動を見つけるのを手伝ってあげよう

いろんなタイプの創作活動に関わるようにしてあげるのも良い

 

5. Play: Emphasize process, not product

完成品ではなく、完成までのプロセスを重視しよう

 

6. Play: Extend time for projects

プロジェクトにかける時間はたっぷり取らなければいけない

試したり、実験したり、挑戦する時間をしっかり確保しよう

 

7. Share: Play the role of matchmaker

子どもたちが、一緒にやる仲間を見つける手助けをしよう

 

8. Share: Get involved as a collaborator

指導しすぎも、指導しなさすぎも良くない

ちょうど良いバランスを見極めるよう努め、コラボレーターとして一緒に取り組もう

 

9. Reflect: Ask (authentic) questions

プロジェクトが進み始めたら、たまに立ち止まって振り返るのも重要

『興味や関心を持っていることはなんだっけ?』

『目の前のプロジェクトに反映されているかな?』

質問して振り返りのきっかけを作ってあげよう

 

10. Reflect: Share your own reflections

自分の考え方や問題への取り組み方をシェアしよう

悩んでいることや自信がないことも含めて反省している姿を見せたほうがよい

大人のそういう姿勢を見ることが、子どもにとって大きな学びになる

 

デザイナーやデベロッパーへの10個のTips

最後に、子ども向けのおもちゃやアクティビティを作成する人向けの10個のTipsです。

 

1. Design for designers

子ども達がそれを使って何かを作ったりデザインできるものを作ろう

 

2. Support low floors and high ceilings

簡単に始められて、でも凝りたければとことん凝ることができるものにしよう

 

3. Widen the walls

一通りでなく、様々な方法で使えるものが良い

 

4. Connect with both interests and ideas

子どもたちの興味と、子ども達の生活に役立つことをつなげられるものが良い

 

5. Prioritize simplicity

多機能で複雑なものではなく、シンプルで、わかりやすく、応用が効くものにしよう

 

6. Understand (deeply) the people you're designing for

利用者アンケートなどでは不十分

ユーザーが実際に使ったり取り組んでいる様子を観察し、ユーザーへの深い理解に基づいて改善していこう

 

7. Invent things that you want to use yourself

自分本位に聞こえるかもしれないが、結局は『自分がやりたい!使いたい!』というものを作る方が、より良いものを作るモチベーションにもなるし、子供にとっても魅力的なものになる

 

8. Put together a small interdisciplinary design team

学問の枠を超えたチームを作ろう

コンピューターサイエンス、教育、心理学など、さまざまな知識やバックグラウンドを持つチームがいれば、より多様な視点を持てる

 

9. Control the design, but leverage the crowd

最終的なデザインの決定権は保持しつつ、たくさんの人の意見を取り入れよう

 

10. Iterate, iterate then iterate again

継続的に批評、修正、変更、更新をしていこう

 

感想

子ども達とどのようなアクティビティをするか、どのようなサポートが必要かといった課題に対して多くの気づきを得ることができました。

 

私自身、子ども達と関わるとき、全くサポートしない方がいいのかな?といつも悩んでいました。

その点、本書では適度なサポートは不可欠で、バランスを取る努力が大切だと書かれており、その考え方にとてもしっくりきました。

これからは、自信を持って援護射撃しつつ、する / しないのバランスを見極めることに注力していきたいです。

 

上記で挙げたTipsに関しては、そのうち子どもとも共有して、一緒に何かアクティビティを作るプロジェクトをまわしてみても面白いかもしれません。

 

もう一点の新しい発見は、スクラッチ開発に込めた思いでした。

これまでのイメージでは『プログラミングを学ぶためのスクラッチ』でした。

本書を読むと、スクラッチはあくまで道具であり、自由な創造を支え、仲間を見つけて接続できることにその本質があるとわかります。

プログラミング能力の向上よりも、スクラッチのコミュニティの成熟が、後の優秀なプログラマーを育てたのだろうなと思いました。

スクラッチの見方が変わりました。